ミステリ

日向まさみち『本格推理委員会』

日向まさみち『本格推理委員会』(産業編集センター 2004年7月31日発行 定価¥1,100) プロローグに「当然ながら事件の犯人は論理的な思考によって導き出された」と書かれていたので「ライト・ノベルの中の数少ないロジック・ミステリか」と読み始めるとそれ…

氷河期?

『ミステリ・マガジン2005年7月号(No.593)』の海外ミステリ情報の中で浅羽莢子が 「どこまで続くコージー氷河期・・・」 と書いている。 おや、「コージー・ミステリ」の今はそのような状態だったのか。

イギリスのミステリ作家がクリスティを嫌う事情

ミステリ・マガジン連載の「英国ミステリ通信」の第79回(『ミステリ・マガジン2005年7月号(No.593)』)で松下祥子が 「イギリスで、クリスティは今でも確かに本が売れテレビ・ドラマも高視聴率を上げているがP・D・ジェイムズやルース・レンデルの世代…

森谷明子『れんげ野原のまんなかで』

森谷明子『れんげ野原のまんなかで』(東京創元社 ミステリ・フロンティア 2005年2月28日発行 定価¥1,500+税) 市の外れにある利用者の少ない図書館(館長と職員3名プラスアルバイト数名)を舞台にした日常ミステリ。 全5話からなる連作短篇集。 加納朋…

『ハードボイルド』に二言 

原りょう『ミステリオーソ』(早川書房 ハヤカワ文庫JA 2005年4月30日発行 定価¥600+税)、『ハードボイルド』(早川書房 ハヤカワ文庫JA 2005年4月30日発行 定価¥600+税)を買った。 単行本版『ミステリオーソ』(早川書房 1995年6月発行)の増補版…

蔵書紹介その11「雑誌 幻影城」

雑誌『メフィスト』(講談社)今月号に有栖川有栖台湾行きのエッセイ、雑誌「幻影城」島崎博編集長に会う、が載っているという話をきいて本日はこれ。 『雑誌 幻影城』の創刊号(1975年2月号)から1年分。 最初の頃の表紙絵はおどろどろしい。 1976年に山野…

解説としてはいかがなものか?

この青い鳥文庫版『三幕の悲劇』の解説で数藤康雄が 「とちゅう退屈な部分がないこともない作品ですが最後まで読みとおしてくださいね」 と書いている。 退屈か退屈でないかは読む人で違う。 また、「クリスティには退屈なところがある」と青い鳥文庫でクリ…

青い鳥文庫版のクリスティ

青い鳥文庫版のアガサ・クリスティはどれも読みやすい。 ミステリ・マガジンの元編集長で評論家・翻訳家の各務三郎が『はじめて話すけど』(フリースタイル 2002年7月発行)の中で、大人向けミステリを子供向け本で完訳するのは大人向け本の完訳より技術がい…

月に一度のクリスティ

今月は『三幕の悲劇』(Three Act Tragedy、1935年作品) 講談社青い鳥文庫版『三幕の悲劇』(花上かつみ訳 2004年8月15日発行 定価¥760)で読んだ。 毎度同じく今回も話の内容をすっかり忘れていたので楽しめた。 クリスティには殺人の動機がミスディレク…

『愚か者死すべし』読了

箱根の行き帰りの電車の中で原りょう『愚か者死すべし』(早川書房 2004年11月30日発行 定価1,600+税)を読み終わった。 やはりチャンドラー色はとても薄い。 前三作とも色が違う。 似ている作風を探すとマイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンも…

チャンドラー離れか?

遅ればせながら、原りょう『愚か者死すべし』(早川書房 2004年11月30日発行 定価1,600+税)を読み始めた。 原りょうの小説は、ロス・マクドナルドのプロットをチャンドラー『長いお別れ』の訳清水俊二の文体で書いたもの。 日本人の作品で比べると生島治郎…

そして誰も・・・

本日の読了本は、今邑彩『そして誰もいなくなる』(中央公論社 C★NOVELS 1993年8月25日発行 1993年当時定価¥780) クリスティ『そして誰もいなくなった』の本歌取りミステリ。 『マリオネットの罠』の頃の赤川次郎作品のような感じがするお話だ。 『そして…

チェスター・ハイムズ「夢にうつつに」(『ミステリ・マガジン2005年5月号(No.591)』から) 

『ミステリ・マガジン2005年5月号(No.591)』(早川書房 2005年5月1日発行 定価¥840) 特集は「ブラック・ライターの系譜」 黒人作家の特集。■チェスター・ハイムズ「夢にうつつに」 (高橋知子訳 Chester Himes「On Dreams and Reality」) 長い刑務所暮…

恩田陸『Q&A』(幻冬舎 2004.6.10発行)を読んで「これと違う展開をしてくれればよかったのに」と思ったことが一つ。 『Q&A』の前半は、公共機関のようなのだけれど得体の知れない機関が事件に遭遇した人たち一人一人へのインタビューで話がすすむ。 …

刑事コロンボ完全版購入 

買った。 全45話完全収録。 『刑事コロンボ 完全版 コンプリート DVD-BOX*23枚組』(ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン 2005年3月25発売 定価¥26,250)刑事コロンボ コンプリートDVD-BOX出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン発売日…

その1

恩田陸『ユージニア』(角川書店 2005年2月3日発行 定価¥1,785)を読み始めた。 最初の2章を読んだところ。 『Q&A』(幻冬舎 2004年6月10日発行 定価¥1,700+税)と始まり方がよく似ている。

その2

恩田陸『ユージニア』の前に 氷川透『各務原氏の逆説 見えない人影』(徳間書店 トクマノベルス 2005年1月25日発行 定価¥860)を読んだ。 アクロバットが無いのが玉に瑕のひたすら論理で押しまくるロジックミステリを書く氷川透だが、このシリーズではおし…

マジシャンが書いた新邦訳ミステリ

昨日本屋の店頭で見かけ、それで知った。 マジシャンのジェイムズ・スウェインJames Swainが書いたミステリの邦訳が出た。 『カジノを罠にかけろ』(James Swain「Grift Sense」2002年作品、文藝春秋 文春文庫 2005.3.10発行 定価¥810)だ。 日本への初紹介…

西澤保彦『生贄を抱く夜』

西澤保彦『生贄を抱く夜』(講談社 講談社ノベルス 2004.12.5発行 定価¥840) 神麻嗣子のチョーモンインシリーズ第7弾。 短篇集。 短篇集『念力密室!』の後半あたりから、番外の長篇『夢幻巡礼』になるともうそうなっていて、西澤保彦の小説はこの頃はほ…

次のインスパイア作品はいつ? 

『ミステリ・マガジン2005年4月号(No.590)』(早川書房 2005.4.1発行 定価¥840) 「ミステリ・マガジン」を買って最初に読むページは、この頃は「ミステリアス・ジャム・セッション」。 村上貴史による日本人作家インタビューだ。 今月のインタビュー相手…

『ミステリ・マガジン2005年4月号(No.590)』の短篇3つ

『ミステリ・マガジン2005年4月号(No.590)』(早川書房 2005.4.1発行 定価¥840) ●特集「危険な女たち」短篇競作 オットー・ペンズラーが編んだアンソロジーのために書き下ろされた短篇群。 そのうち文庫化かポケット・ミステリ化されるのかもしれない。 …

カー作品をジャケ買い 

久しぶりに古本を数冊買った。 1冊はこの本。 カーター・ディクスン『ユダの窓』(Carter Dicson 「The Judas Window」1938年作品、砧一郎訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫1978.3.31発行 1978年当時定価¥440 古書値¥400) 持っていなかった依光隆カバ…

F.W.クロフツ作品を初めて読む方へ

参加しているミステリ読書人の集まるメーリングリストの中で、「クロフツの『樽』の新訳が出ましたね、未読なんですが読んでおいたほうがいいのですか」と質問がありいくつかやりとりがあった。 ここに書いた文章はそのときのものを書き直したもの。 クロフ…

上遠野浩平『禁涙境事件』

上遠野浩平『禁涙境事件 some tragedies of no-tear land』(講談社 講談社ノベルス 2005.1.10発行 定価¥920) 上遠野浩平のSFミステリ「事件」シリーズの4作め。 竜が棲み魔道師が操る魔法で支配される世界でおこる事件を解き明かすのは仮面をつけた戦…

ミスディレクション−マジックとミステリ

マジックには2つのミスディレクションがある。 (このあたりは高木重朗さんの『魔法の心理学』(講談社現代新書)や『トリックの心理学』(講談社現代新書)からの受け売り) * * * * 1つは物理的ミスディレクション。 舞台のマジシャンが突然「あっ」と叫…

別冊宝島1117号『大沢在昌特集』

宮部みゆき、京極夏彦と続いたのでそのうち出るだろうと待っていたムックが出た。 別冊宝島1117号『ALL ABOUT大沢在昌―大沢在昌全面協力』(宝島社 2005.3.1発行 定価¥1,365) 大沢在昌が初めて新人賞に応募した佐久間公の第1作『レスリーへの伝言』の…

上遠野浩平『しずるさんと底無し密室たち』

上遠野浩平『しずるさんと底無し密室たち The Bottomless Closed-Rooms In The Limited World』(富士見書房 富士見ミステリー文庫 2004.12.15発行 定価¥540) 二人の少女の会話を楽しむ「しずるさん」シリーズ2冊めのミステリ短篇集。 今回の短篇はすべて…

エド・マクベイン『歌姫』

エド・マクベイン『歌姫』(Ed Mcbain『The Fruimious Bandersnatch』、2004年作品)(早川書房 山本博訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ 2004.12.31発行) 新人歌手ターマーの誘拐事件が87分署内で発生した。事件が報じられるやターマーの曲は大ヒットとな…

職人作家の作品を読書中

何の本を読もうか、迷ったときは職人作家の本。 というわけでエド・マクベイン『歌姫』(Ed Mcbain『The Fruimious Bandersnatch』、2004年作品)(早川書房 山本博訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ 2004.12.31発行)読書中。 海外だとローレンス・ブロック…

シャーロット・マクラウドのことを少し

シャーロット・マクラウドCharlotte MacLeodが亡くなった。 アリサ・クレイグの別名義を持つカナダ生まれのアメリカ在住作家でありコージー派ミステリ作家の代名詞であった作家である。 彼女の作風はシャンディ教授シリーズに代表されるイギリスの雰囲気漂う…