カー作品をジャケ買い 

nobu_magic2005-02-28


 久しぶりに古本を数冊買った。
 1冊はこの本。


 カーター・ディクスン『ユダの窓』(Carter Dicson 「The Judas Window」1938年作品、砧一郎訳 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫1978.3.31発行 1978年当時定価¥440 古書値¥400)


 持っていなかった依光隆カバー絵文庫を「ジャケ買い」したのだ。


 『ユダの窓』の密室は子供向け推理クイズ本なのでおなじみのトリック。
 江戸川乱歩が好んでいたこの密室トリック、はっきりいって誰もが少し考えれば思いつきそうなトリックである。
 「驚天動地のトリック」とトリック本や解説本などで説明されているのを見ることがあるが、この文庫の裏表紙あらすじにも「巧妙なトリック」とある、初めてこのトリックを見た(読んだ)子供のときどこが驚天動地なのだ?とそれを理解できなかった。


 かなり前徳間書店から数号のみ出ていた推理小説専門誌『ルパン』で、たしかこの雑誌だったはず、中井英夫が「『ユダの窓』の密室トリックにはがっかりした」とそういったたぐいのことを書いていたのを見て自分だけがそのように思っていたのではなかったんだと子供ごころに安心したおぼえがある。
 そのとき中井英夫のことをなにやら難しいミステリを書いた人だぐらいしか知っていなかったのだがミステリを書く大人でもそう思っている人がいるんだと。


 そういったわけでそれから数年後『ユダの窓』がハヤカワ・ポケット・ミステリで改訳復刊され読めるようになったとき「あの密室トリックかぁ、でもカーター・ディクスンだしとりあえず読んでおくか」と読み始めた。


 ところがこれがおもしろい。


 『ユダの窓』は、密室トリックに依存した話ではなかったからだ。
 密室トリックそのものは二の次三の次、とりあえず密室になっていればトリック自体はどんなにばかばかしいものでもかまわないお話だったのである。


 『ユダの窓』はカーター・ディクスンの法廷ミステリ。
 それもとてもおもしろい法廷ミステリ。

ユダの窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-5)

ユダの窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫 6-5)