それでもスプーンは曲がる


 ニセ科学好きの今日の読了本はこれ。


超能力番組を10倍楽しむ本

超能力番組を10倍楽しむ本


 おとうさんが子供たちに、スキがいっぱいツッコミどころ満載の超能力番組の見方を教える、という体裁の子供から大人まで楽しめる本。


 山本弘は「と学会」に所属する懐疑論者でSF作家。
 超能力番組のウソの見分け方を教えてくれる。


 とりあげられている番組は超能力ブームの頃の自称超能力者がパフォーマンスを披露する番組と現在の超能力者が行方不明者・失踪者を探す形式の番組。


 自称超能力者がパフォーマンスを披露する過去の番組についての話は、よく知られているものが多いのだがマジック好きならたぶん楽しめるはず。


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 当方の超能力に対する姿勢は以下。
 「あるかもしれないし、ないかもしれない」
 「あるかないかは知らないが、あるとおもしろいのであったらいいな」


 超能力番組を見ていつも感じることは「同じことがマジックでできるじゃん」
 マジックの手順と同じ手順で不思議現象を演じる自称超能力者を見るとがっかりしてしまう。
 「もうちょっと超能力者らしく見せてくれよ」

ポップアートの第一人者


 しかけ絵本の第一人者の作品展示会だけあってパンフレットもポップアート
 『不思議な国のアリス』からの1ページを抜き出し、それがパンフレットになっていた。


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 西武池袋本店イルムス館2階の西武ギャラリーで行われている『ロバート・サブダ しかけ絵本の世界展』を見に行ってきた。


 しかけ絵本は、本を開く行為が楽しい。
 会場には開いた状態で固定されていたものあるがそれだとおもしろさ半減。
 本を開いていくとじょじょに立体化していくところがおもしろいのだ。


 展示会の監修者はもちろんそこのところはわかっていて、実物の10数倍ぐらいの巨大絵本が展示されていた。
 ボタンを押すと巨大絵本がゆっくりと開いていく。
 大きいだけに絵の飛び出し方に迫力がある。
 『オズの魔法』の竜巻のページや気球のページでは歓声が上がっていた。


 しかけ絵本の歴史コーナもあり、その中では1820年頃のパノラマ絵本がおもしろい。


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 出口にはロバート・サブダの絵本販売コーナがあり、これだけの展示品を見せられた後、それがそう高くない金額(4千円前後)で自分のものになるとなればそりゃ思わず買ってしまう。




オズの魔法使い (とびだししかけえほん)

オズの魔法使い (とびだししかけえほん)

不思議の国のアリス (とびだししかけえほん)

不思議の国のアリス (とびだししかけえほん)

本日のマジック雑感

 本日、ニンテンドーDSの「マジック大全」発売。


 マジック用具メーカーのテンヨーが全面協力。
 サイトを見ると以前テンヨーから販売されたWindows98のソフト「サイバーマジシャン/デジタル・イリュージョン編」と「サイバーマジシャン電脳手品師「デジタル・ミステリー編」」が元になっているものもあるようだ。


 「デジタル・ミステリー編」の「水晶の透視術」がDS化されている。
 それとイラストから想像すると「デジタル・イリュージョン編」の「マジシャンマン」もありそうな気配。


 ゲームをしない人間なので本体を持っていない。
 これだけのためにDSを買うのもなぁ。


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 泡坂妻夫さんの新刊が出る。
 『揚羽蝶』(徳間書店 2006年11月刊)もそうだがもう一冊。


 『泡坂妻夫 マジックの世界』(東京堂出版 2006年11月刊行)
 泡坂妻夫さんののマジック作品集。
 まだ、実物を確認できていない。

 
 一般書店で売られる泡坂さんのマジック本としては『魔術館の一夜』(社会思想社 1983年2月刊→文庫1987年5月刊)以来2冊め。


 2001年の厚川賞パーティのとき厚川昌男(泡坂さんの本名)名義で『カードの島』という小冊子が出た。
 続いて『コインの島』、『ロープの島』、『パズルの島』が出る、という話だったが未だ出ていない。
 原稿は出来ているという話だったのだが。


 それらが小冊子の形を経ず書籍化されたのかもしれない。


ある翻訳家の死


 本日発売のミステリマガジン最新号(2006年11月号)で翻訳家・菊池光が今年6月に亡くなったことを知る。


 菊池光は器用な翻訳家では無かったが、肉体を痛めつける話の訳では冴えに冴えていた。
 ディック・フランシス、ロバート・B・パーカー、ギャビン・ライアル、ジャック・ヒギンズ、などなど。


 ミステリマガジンには翻訳リストが載っていて本の形になっているもの(雑誌は除く)は全部で268冊。
 リストは、単行本、文庫本でダブっているものを含めている、なので正確には数えてないけれど作品数にするとたぶん100強。
 半分以上を読んでいるのがわかり、自分にとって大事な翻訳家が亡くなったんだ、とリストを見て気づく。


 ディック・フランシスが追悼文を寄せている
 「今月に出版するわたしの新作を翻訳してくれるはずの彼がいないことが、残念でならない」


いちごを金に


 フジTV19時からの『マジック革命!セロ!』を見た。
 この形のマジック番組ではセロの番組が頭一つも二つも抜けている。
 テレビ東京時代のネタをそのまま使っているものもあったのだがさらに一ひねりしていてあいかわらずおもしろい。

 マニアから見ると、知っているネタ、知らないがたぶんこうだろうと想像できるネタもあるのだがセロは見せ方が素晴らしいのでどれも楽しめた。

 とくに『アテンションプリーズ』出演者を前に演じたマジックは、見せられて「ああ、なんで自分はこの演出を思いつかないのだろう」と思う。


 (ただカード・スルー・ウィンドウやアーム・スルー・ウィンドウはマジック番組で演じすぎの感がありでテレビではもう流さないほうがいいんじゃないだろうか。) 


 スタジオやストリートで演じるマジックの量を少なくして、番組の1/4ほどはネパールの奥地でそこの子供たちにマジックを見せるところを写したのもよかった。


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 しかしセロはかっこいい。
 女の子が進んで手を握ってくるマジシャンが、じっと目をみつめ女の子をドキドキさせるマジシャンが、今の日本に何人いるのだろう。


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 カード・マジック・マニアにとって気になったのは『ブスの瞳に恋してる』出演者の前で演じたカードあて。
 どの手を使ったのだろうか?
 カードをあてる方法でなくて○○○○する方法が。

50年後は2009年

 レイモンド・チャンドラーRaymond Chandlerが亡くなったのは1959年の3月26日。
 著作権の保護期間は、作者の没後50年。
 2009年になると、『おそらく各社がどっと新訳を出すだろうと言われている』と読んだのは吉野仁のサイトで。


 誰が訳すだろうか、と真っ先に思い浮かぶのは村上春樹である。
 新潮社か、文藝春秋、あるいは講談社から出るのだろうな、と思っていた。


 まさか翻訳権を持っている早川書房が来年2007年に新訳を出すとは思わなかった。
 http://opendoors.asahi.com/asahido/boston/002.html


 翻訳するのは『長いお別れ』
 今から楽しみである。

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 村上春樹が登場したとき、「レイモンド・チャンドラーの作風を日本語で書いている作家がいる」と言われていたそうだ。


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 村上春樹の翻訳と合うチャンドラー作品は、長篇では『長いお別れ』と『プレイ・バック』だろう。
 あと、短篇がいくつか。


 『大いなる眠り』や『高い窓』、『湖中の女』は合わないような気がする。
 『かわいい女』は微妙だ。
 なんとなくだけど。


 『さらば愛しき女よ』は、さてどうだろう。
 一見合いそうで、でも合わないような気がする。
 これもなんとなくだけど。

もう一度ミスディレクション談義


 本日の日本テレビ世界一受けたい授業』の1番めの講義は立教大学文学部心理学科教授の芳賀繁、「人はなぜミスを犯すのか?ヒューマンエラーの謎」。


 テストとして見せられたのがアメリカの認知心理学者の権威ナイサー博士が作ったビデオ。
 ああ、これは先日の箱根クロース・アップ・マジック・コンベンションのミスディレクション講義で見たビデオ。


 芳賀繁いわく、
「ひとつのことに注意を集中すると他のところが不注意になる」
「注意と不注意は同時に存在する」


 うむ、これはそのままミスディレクションにはあてはまるではないか。


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 「ミステリ・マガジン」(早川書房)の次号(2006年7月号)から「絞首人の手伝い」分載が始まる不可能犯罪作家ヘイク・タルボット(ハヤカワ・ポケット・ミステリ『魔の淵』の作者でもある)は本名をヘニング・ネルムズと言い、最初弁護士の職業につきその後マジック舞台の演出の仕事に転向した。


 ヘニング・ネルムズ(=ヘイク・タルボット)はマジック専門書を一冊書いている。


Magic and Showmanship: A Handbook for Conjurers (Dover Magic Books)

Magic and Showmanship: A Handbook for Conjurers (Dover Magic Books)


 他のマジック専門書の中でよく引用される本なのでセミ・クラシックな専門書と言ってよく、ある程度マジックを学んだ中級者・上級者向けのマジックのプレゼンテーション理論書。


 ミスディレクションの章では最初にこんなことを書いている。


 「役者は重要な場面では何が起こったかをはっきりわからせるために観客の注意を自分に向けさせる。
 いっぽうマジシャンは秘密から観客の目をそらせるミスディレクションを行う。
 観客の注意を向けることと、そらすこと(ミスディレクション)は別々のものであるという誤解があるが、実際は同じテクニックであり、違いは目的とするところだけである。」



「ひとつのことに注意を集中すると他のところが不注意になる」
「注意と不注意は同時に存在する」
 あてはまるでしょ?