その2:新・箱根クロースアップ祭(第13回)レポート

 ハウダニットの謎解きミステリのトリックは「なになにもの」と分類できるものがある。
 例えば「密室もの」だとか「アリバイ破りもの」だとか。

 マジックのトリックも「なになにもの」と分類できるものがある。
 『Oil and Water』もその一つ。

 コンセプトは誰だったか(たしかウォルター・ギブソンWalter Gibsonだったか、調べてみなくては)が発明しカード・マジック界の巨人エドワード・マーローEdward Marloが『Oil and Water』と名付け有名にした手順。
 赤いマークのカード4枚と黒いマークのカード4枚を互い違いに混ぜるのだがいつのまにか赤4枚と黒4枚に分かれてしまう。
 混ぜても分離してしまうその様子を「水と油」になぞらえた。

 この手順、クリエーター心をくすぐるものでマーローが手順を発表していらい何百もの手順がつくられ今もどこかで誰かがその数を増やしている。
 マーローの手順に添い赤4枚黒4枚でおこなうもの、赤3枚と黒3枚でおこなうもの、仕掛けのあるカードでおこなうもの、などなど。

 『Oil and Water』の手順をつくるときどこに力点をおくかで手順の作りかたが変わってくる。
 混ぜるとき赤黒がたしかに混ぜたところを見せることに力点をおくか、赤黒たしかに分かれたところに力点をおくか。

 全てのカードを表向きにして混ぜ、数えなおすなどの余分な動作をしないで全てが赤黒に分かれていることを見せることができればそれが理想の『Oil and Water』となる。
 例えば、8枚のカードを表向きのままファン上に広げ赤黒が交互に混ぜ合わされていることを見せファンを広げたままファン全体を裏向きにしもう一度表向きにしたときは赤黒分離している、あるいは8枚のカードを表向きのままファン上に広げ赤黒が交互に混ぜ合わされていることを見せ表向きのままいったんファンを閉じ広がると赤黒に分かれてしまっている、など。

 1日めのナイトショー2でホアン・タマリッツはその理想形を見せてくれた。
 会場内どよめきがおこった。