密室の原理

 『有栖川有栖の密室大図鑑』をパラパラめくっていて折原一の『天外消失事件』がおもしろそうだったので、そういえば折原一『五つの棺』は読んだけれどこれは読んでいなかったなと『七つの棺』(東京創元社 創元推理文庫 1992年11月27日発行)を読んでみた。

 でも、本日のお話は『天外消失事件』についてではなく『七つの棺』の解説に載っていた密室の分類について。

 浜田知明による『地下室』(1984年7月)の<密室犯罪を行おうとする側から考えた>原理別分類がおもしろい。
 これを眺めて真剣に考えればもしかすると密室の一つか二つ考えつくかもしれない。

 ミステリのトリックを考えたことはないがマジックのトリックは暇があれば考えている。
 考える際助けになるのはトリックの原理別分類。
 トリックが達成する現象別分類からは考えはなかなか浮かばない。

 乱歩の「類別トリック集成」の密室トリック分類は現象別分類だ。
 この分類は読者の眼から見た分類。
 ここから密室トリックを考えるのは難しい。

 <乱歩の「類別トリック集成」の密室トリック分類>はJ・D・カー『三つの棺』の<密室講義>が元となっている。
 つまりカーも読者の眼からの現象別分類を行っているわけだ。
 たぶんカーにとってこの分類は便宜的なものでありトリック発想の手助けにはしていなかったのだと思う。
 カーは天才ひらめき型のトリック考案者だったのだ。

 『七つの棺』の解説には天城一の数学的分類も載っていてこちらは読むとなんだかわかったような気にはなるのだが実際のところはわかりにくい。

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 密室の分類方法で知りたいのはE・D・ホックの分類。
 ホックは天才ひらめき型ではなく秀才ヴァリエーション発想型。
 きっと独自の密室分類を持っていると思うのだが。

有栖川有栖の密室大図鑑 (新潮文庫)

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