ミスディレクション理論を説明することは・・
4月8日、9日に箱根で行われたクロース・アップ・マジック・コンベンションのゲスト、ジーン・松浦氏はスライディーニの研究家だ。
トニー・スライディーニTony Slydini (1901-1991) はダイ・ヴァーノンDai Vernon (1894-1992)(プロフェッサー)と並ぶ現代クロース・アップ・マジックの礎を築いた人である。
スライディーニといえばミスディレクション。
クロース・アップ・マジックにおけるミスディレクションとは何かを徹底的に研究したことで知られている。
当然、箱根でのジーン・松浦氏のレクチャーもミスディレクションについてが中心になった。
スライディーニが開発したミスディレクションの一つに「視線の交錯」と呼ばれているものがある。
観客の視線の誘導に関するものである。
マジックの秘密に関することなのでそれが何であるかここでは説明しない。
「視線の交錯」は人が行う動作としては不自然。
だが、目の前で行われると不自然さが無く、そして強烈なミスディレクションに引っかかってしまうところがおもしろい。
ジーン・松浦氏はスライディーニに尋ねたそうだ。
「動作としては不自然ではないか?でもなぜこれにひっかかってしまうのでしょうか?」
「そういうものなのだ」とスライディーニは答えたとのこと。
「スライディーニはミスディレクションを言葉で説明することはできませんでした。
でも、彼は肌で知っていたのです」
ミスディレクションを説明しようとすると心理学や認知学の領域に入ってしまうのかもしれない。
そして言葉で説明できるという人は実践に向かず、言葉でできなくても肌で感覚でわかっている人が実践に向くということなのかもしれない。
* * * *
そこで連想されるのがミステリの世界にも自身はほとんど語ってはいないのだがたぐいまれないミスディレクションの名手がいた、ということである。
ミスディレクションの女王、クリスティのことだ。
奇術作家の新刊
本屋に寄った。
泡坂妻夫さんの新刊『春のとなり』(南雲堂 2006年4月発行)を見かけた。
ここ最近雑誌「ミステリーズ」に載った犯人当て懸賞ミステリ以外ミステリを書いていない泡坂さんの新刊はもちろんミステリでは無い。
『このミステリーがすごい!(2006年版)』の隠し玉に泡坂さんが書いていた終戦直後の自伝的小説。
買いたかったのだが1日に買う本は1冊までと決めているので今日は見送り。
* * * *
本日買ったのは、この本。
紀田順一郎『戦後創成期ミステリ日記』
松籟社 2006年4月14日発行 定価¥2,200
紀田順一郎の慶應義塾大学推理小説同好会時代、SRの会初期の評論集だ。
「本棚の骸骨」サイトの新刊案内で出ることは知っていたのだが聞いたことのない出版社の本なので注文しないと手に入らないのだろうと思っていたらさすがジュンク堂池袋、ちゃんと置いてあった。
パラパラと斜め読み。
SRの会会報「SRマンスリー」に載った毒舌ミステリ書評「To Buy or Not to Buy」と、これまた毒舌ミステリ時評「推理小説−これでよいのか」がおもしろい。
ハヤカワ・ポケット・ミステリが創刊されたころの日本、そのころの同時代証言を読むことができて楽し。
マジェイア
ポール・ギャリコ『ほんものの魔法使』(Paul Gallico 「The Man who was Magic」、1966年作品)(矢川澄子訳 ちくま書房 ちくま文庫 2006年2月10日発行 定価¥780)を購入。
世界中の奇術師が集う町マジェイア。
ある日現れた旅人が数々の不思議を見せる。
マジェイアのマジシャンたちは誰も彼のマジックのタネがわからない。
彼はいったい・・・、というお話。
長らく絶版だったのでうれしい復刊。
ほんものの魔法使いは必読のファンタジー。
と言ってはいるが昔昔読んだきりですっかり内容を忘れている。
魔法使い失格?
* * *
『ほんものの魔法使』訳者あとがきを見ると「奇術専門用語の訳し方については、田中潤司氏のご教授を仰ぎました」とある。
田中潤司はミステリ研究家、翻訳家でありアマチュア・マジシャンとしても名が知られている。
クレイトン・ロースン『折れた足の手懸り』を力書房の奇術専門誌『奇術研究』(1956〜1978)に訳し載せている。
ディクスン・カーと面識があることは北村薫さんがそのことを話していたがクレイトン・ロースンとも会っているらしい。
翻訳家でマジシャンといえば阿部主計もその一人。
不可能犯罪ミステリの惜しい佳作、クレイトン・ロースン『天外消失』を訳している。
東京創元社から出ていたクレイトン・ロースンの『首のない女』と『世界名作推理小説大系』版の『帽子から飛び出した死』を訳している上野景福は大学教授。
日本マジック界の名士の方々が参加されているTAMC(東京アマチュア・マジシアンズ・クラブ)に所属していたアマチュア・マジシャン。
- 作者: ポール・ギャリコ,矢川澄子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/09
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カーは・・・
トリノ・オリンピックの聖火台についた火は聖火ランナーが持ってきた火じゃなくて花火の火じゃないんかい、と誰かつっこまないかな?
* * * *
『SFが読みたい! 2006年度版』(早川書房 2006年2月15日発行 定価¥700+税)の池上永一インタビュウに『シャングリ・ラ』(角川書店 2005年9月23日発行)連載時の挿絵が載っているURLが書いてあったので見た。
いいではないですか。
何故単行本に載せなかったのか?
描いているのは『交響詩エウレカセブン』の吉田健一。
* * * *
ディクスン・カーの新翻訳作品『ヴードゥーの悪魔』(原書房)を買い忘れてしまった。
* * * *
カーの本を買い忘れたので本日はカーのお話。
1年以上前のこと、クレイトン・ロースンのことをインターネットで調べているときこんな言葉が検索にひっかかった。
「カーってゲイだった?」
これは本国版エラリィ・クイーンズ・ミステリ・マガジン、通称EQMMの読者フォーラムのトピックの一つ。
「カーってゲイだったんですよね。彼の作品のいくつかでそれをうかがうことができます。特に『火刑法廷』に顕著です」と名無し君がまずトピックを作った。
「そんなはずないじゃん」「カーの評伝を読んでごらんよ。そんなこと一つも書いて無いでしょ」「カーは結婚してるよ」と3人ほどのリプライの後、出てきましたこの人が。
それはダグラス・G・グリーン。
いわずと知れたカー研究の第一人者、『ジョン・ディクスン・カー―「奇蹟を解く男」』(国書刊行会 1996年11月発行)の作者だ。
発言は簡潔。
「違うよ、ゲイじゃないよ」
で、その次書き込んだ人の発言が迷言。
「何人かの人がクレイトン・ロースンと関係があったと言っているんだけど」
おいおいおい、と画面を見ながら思わず突っ込んでしまった。
(この箇所が検索にひっかかったわけ)
ダグラス・G・グリーンも「なぬ〜、誰だいそんなこと言ってるの。事実無根」とばっさり。
その後は的外れな発言があって盛り上がることもなくそのまま終息。
書き込んだ人の意図がわからず尻切れトンボで終わってしまった。
カーについてのどうでもいいお話でした。
うちわ
二川滋夫さんの本『基礎からはじめるコインマジック』(東京堂出版 2006年1月30日発行 定価¥1,800+税)の出版記念パーティに行って来た。
場所は新横浜の新横浜国際ホテル。
おみやげはサイン入りの本とうちわ。
パーティの名が『出版記念うちわの会』ということで。
ムムムムム、この駄洒落は・・・。
二川滋夫さんは日本が世界に誇るクロース・アップ・マジック研究家で特にコイン・マジックに関しては世界の五本の指に入る人。
マジック界では世界的に有名な人なのに駄洒落好きが玉に瑕。
でも、しかし、このうちわ。
ただのうちわではない。
マジックができるすぐれものなのである。
さすがKing of Coinの二川さん。
単なる駄洒落ではないわけだ。
* * * *
毎月『Monthly Magic Lesson』のDVDを出されているプロ・マジシャンのゆうきともさんが会場に来られていたので話をする。
今月発売のVolume.8のテーマのテクニックについて少し。
この話はそのうちいつか。
- 作者: 二川滋夫
- 出版社/メーカー: 東京堂出版
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True Magic Vol.2
アルド・コロンビーニAldo Colombiniの新しいDVD、香港に招かれて撮った「True Magic Volume2」(http://www3.magictone.com/draft/template/aldo_promote.htm)を見ているところ。
カード・マジックが主。
コロンビーニのカード・マジックはマニアには物足りないところがあるのだが、操作が易しく(ようするに難しいテクニックが不要で)、かつ現象がシンプルな割にはダイレクトでヴィジュアルであるところが特徴。
このDVDの中で最も気に入ったのは、マックスおじさんの「B-Wave」のヴァリエーションである「Trident」。
前半はロイ・ウォルトンの手法を使ってトントントンとたたみかけラストにコロンビーニ版「B-Wave」を持ってくる、この組み合わせ方がすばらしい。
そのうちどこかで演じてみよう。
お一人でご覧になる方はご遠慮下さい
『心臓の弱い方、お一人でご覧になる方は、この「恐怖劇場アンバランス」はご遠慮下さい...』
このナレーションを久しぶりに聞き見た。
円谷プロ制作の『恐怖劇場アンバランス』(1973年1月〜1973年4月放映)の第一話『木乃伊の恋』は清順監督。
チャンネルNECOでは数ヶ月前から鈴木清順特集をしてる。
今月は清順監督レア作品を放映していてその中の一本。
本日最初の部分だけ見た。
うむ、懐かしい。
青島幸男がホスト役だったのか、まったく記憶になかった。
* * *
『恐怖劇場アンバランス』はその内容をほとんど覚えていないのだが一作だけかろうじて覚えているものがある。
それは仁木悦子原作の『猫は知っていた』
猫が不気味だった。
猫の描き方がポーの『黒猫』のような感じだった。
* * *
『恐怖劇場アンバランス』の作品数は全部で13。
「鈴木清順、藤田敏八、長谷部安春、神代辰巳といった日活で活躍した人たちが監督してんだ、全部見てみたいぜ」と作品リストを見て思う。
* * *
VHSビデオにはいくつかなったようなのだがDVD化はされていない。
『怪奇大作戦』がDVD化されたからこれももしかするとそのうちDVD化されるかもしれない。
* * *
しかし、炎の中に猫が歩いているバックにかかるこのイントロは子供が聞いたらうなされそうだ。
たぶんうなされていたのだろうな。