「『クラシック・パス』についての疑問」
今、カード・マジックを趣味にしている人たちにとって話題のDVD『ふじいあきらのカードマジック事典アンソロジー』(78分、ポニーキャニオン 2005年3月16日発売 定価¥3,990)を買った。
100種類以上のカード・マジックが収められている『カードマジック事典』(東京堂出版 1983年1月発行 定価3,990円+税)から10個のカード・マジックを選びふじいあきらさんがレクチャーしたもの。
カード・マジック初心者には向かないこのDVD全体の感想はそのうち書くことにして本日はその中の一つを。
とは言ってもマジックについてでは無くテクニックについて。
* * * *
以前からそうだったのだが最近とみにカード・マジックのテクニックの一つ「クラシック・パス」*1について訊かれる。
とても難易度の高いものであり最初からあきらめているテクニックなので訊かれたときは「できません」と答えている。
このDVDではその「クラシック・パス」についての解説もある。
それを見て感じたことはやはりクラシック・パスはカード・コントロール*2には向かないということ。
フラリッシュ*3として使うには有効なところがあるのだが。
* * * *
今までプロアマチュアを含めて100人ぐらいのカーディシャン*4にクラシック・パスを実際に見せてもらった。
映像を見た人を加えれば150人ぐらいになるだろうか。
そのうち95%は何をやっているのか丸見えで正直なところ「これをクラシック・パスができると言っていいのだろうか?」と感じた。
そのうち4%は、トランプがそのように動いているところは見えないのだがその他の動きや気配でたぶんクラシック・パスを行っているのだろうなとわかるものだった。
クラシック・パスを行っていることを微塵にも感じさせないテクニックを持っているカーディシャンは1%であった。
「クラシック・パス」を出来る人は数少ない。
出来るようになるには相当の練習量とたえず自分の動きを客観的にチェックできる繊細さが必要なようだ。
まぁ、上に書いたことはあくまで個人的な見解であるけれど。
* * * *
で、この「クラシック・パス」、カード・マジックに必要不可欠なテクニックかといえばそうでもない。
カード・トリックが1000個あってその中にクラシック・パスが必要不可欠なトリックを探すとせいぜい1つあるかないかだろう。
トリックの解説書に「ここでクラシック・パスを行う」と書いてあっても他のもっと易しいテクニックを代用すればそれで十分なことのほうが多い。
難易度が高く習得に相当な努力をしいられるテクニックではあるがそう役立つとは思えないテクニックなのである。
(もちろん上に書いた1%の中に入るほどほぼパーフェクトに行うことができればとても役に立つだろうが)
* * * *
で、ここまでDVDを発端にして「クラシック・パス」というテクニックについて少し書いてきたのだが、何故本日話題にとりあげたかというと、日ごろの疑問を少し書いてみたかったのである。
難易度が高く習得にそうとうかかり、でも役立つことがあまりないテクニックにマニアは何故夢中になるのか。
(「クラシック・パスができなければカーディシャンとは呼べない」と言う人たちもいる。)
* * * *
本日ふと思ったのは、これは、入手困難本・古書高価本のミステリを多く持ってはいるけれどほとんど読んでいない、あるいは、手間ひまおよびお金をかけて入手したもののまったくおもしろくなかったミステリ、とどこか通じるものがあるのではないだろうか、ということ。
このあたりの話題はいずれまた。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/03/16
- メディア: DVD
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*1:クラシック・パス:
Classic Pass。
上に書いたようにとても難しいカード・マジックのテクニックの一つ。
難しくてその詳細を書くことができない。
*2:カード・コントロール:
Card Control
1枚以上の特定のカードを1組のトランプの中の特定の位置にひそかにもっていくテクニック。
数限りない方法がある。
数が多いので詳細は省略。
*3:フラリッシュ
Flourish。
本来マジックとは、マジシャンは何も怪しいことはしていないのに不思議なことが起こることを見せる芸能。
フラリッシュとはそれに反し、マジシャンが意図的にみせるテクニックを指す。
感覚としてはジャグリングに近い。
例えば指先のテクニックのみでカードを飛ばしブーメランのように手元に戻すテクニックなど。
*4:カーディシャン:
Cardician。
クロース・アップ・マジックのカード・マジックを専門とするマジシャン。