ミスディレクション理論を説明することは・・
4月8日、9日に箱根で行われたクロース・アップ・マジック・コンベンションのゲスト、ジーン・松浦氏はスライディーニの研究家だ。
トニー・スライディーニTony Slydini (1901-1991) はダイ・ヴァーノンDai Vernon (1894-1992)(プロフェッサー)と並ぶ現代クロース・アップ・マジックの礎を築いた人である。
スライディーニといえばミスディレクション。
クロース・アップ・マジックにおけるミスディレクションとは何かを徹底的に研究したことで知られている。
当然、箱根でのジーン・松浦氏のレクチャーもミスディレクションについてが中心になった。
スライディーニが開発したミスディレクションの一つに「視線の交錯」と呼ばれているものがある。
観客の視線の誘導に関するものである。
マジックの秘密に関することなのでそれが何であるかここでは説明しない。
「視線の交錯」は人が行う動作としては不自然。
だが、目の前で行われると不自然さが無く、そして強烈なミスディレクションに引っかかってしまうところがおもしろい。
ジーン・松浦氏はスライディーニに尋ねたそうだ。
「動作としては不自然ではないか?でもなぜこれにひっかかってしまうのでしょうか?」
「そういうものなのだ」とスライディーニは答えたとのこと。
「スライディーニはミスディレクションを言葉で説明することはできませんでした。
でも、彼は肌で知っていたのです」
ミスディレクションを説明しようとすると心理学や認知学の領域に入ってしまうのかもしれない。
そして言葉で説明できるという人は実践に向かず、言葉でできなくても肌で感覚でわかっている人が実践に向くということなのかもしれない。
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そこで連想されるのがミステリの世界にも自身はほとんど語ってはいないのだがたぐいまれないミスディレクションの名手がいた、ということである。
ミスディレクションの女王、クリスティのことだ。