古典のこと
ミステリ・SF好きの人たち何人かのブログに「古典」についての記述がありお互いの論旨が少しずれているような気がしたので一言。
たぶんそれぞれ「古典」の定義が違うのだろう。
○古典(あるいはクラシック)とは書かれた年代が古い作品を指すのでは無い。
○古典とは「すぐれた作品であり、過去の長い年月にわたって多くの人々に愛好されてきた作品」である。
○過去長い間読まれていない作品は古典と呼べない。
つもり埋もれた作品は古典ではない。
○古典は新刊本屋で容易に手に入る作品。
いっとき(2〜3年のときもある)品切れとなる場合もあるがそのうち重版がかかる。
○新刊本屋で容易に手に入る古い作品がすべて古典というわけではない。
例えばヴァン・ダイン『僧正殺人事件』は古典といっていいかもしれないが『ベンスン殺人事件』は古典では無い。
○何年以上前の作品が古典となるかはっきりさせておくほうがいいのだが明確な定義はない。
ミステリとSFではたぶん年代が違う。
ミステリの場合もジャンルで違ってくる。
例えば謎解きミステリは1930年代までぐらいが古典。
ハードボイルドだと1950年代までぐらいか。
○作品でなく作家名でその作家が書いたものを古典としてしまう人もいるがそれもいかがなものか。
例えばクリスティ。
クリスティは息の長い作家だった。
『アクロイド殺し』(1926年作品)を古典と呼ぶことに異議を唱える人はたぶん少ないだろう。
同じクリスティの『鏡は横にひび割れて』も多くの人に愛されている作品だが1962年の作品。
比較的新しい作品なので古典とは呼べないだろう。
古典と呼ばれる作品を書いた作家だからといってその作家の書いた多くの人から愛されている作品をすべて古典と呼ぶわけにはいかない。
○「すぐれた作品」の「すぐれた」の定義もあいまい。
例えば謎解きミステリの場合。
謎解きミステリ好き10人と、とくに謎解きミステリ好きではないがミステリ好き10人と、とくにミステリ好きではないが小説好き10人がその作品を読んで、
謎解きミステリ好き10人中8人以上が、
ミステリ好き10人中4人以上が、
小説好き10人中2人以上が、
「おもしろい」とか「すぐれた」だとか感想を持つような作品、が私的定義。
○「多くの人々に愛好されてきた作品」の「多く」もどのような読み手の多さを指すか曖昧だ。
プロの作家・評論家の多くなのか、一般読者の人気の多さをいうのか。
この話、もう少しなにかつけくわなければならないような気がする。