五十嵐貴久『TVJ』

 五十嵐貴久『TVJ』(文藝春秋 2005年1月10日発行 定価¥1,800+税)

 占拠されるテレビジャパン社屋の見取り図が一番最後のページにあるなんて。
 そんな気づかないところに置かれても。
 読み終わった後に見取り図を見てもそれじゃ意味がないでしょう。
 不満はそれだけ。

 話はとてもおもしろい。

 この形の冒険小説では、占拠された内部にとりのこされ徒手空拳で闘う人間が、たまたま居合わせた戦闘のプロフェッショナルか、戦闘プロフェッショナルではないがなんらかの専門技術を持つ場合がほとんど。
 だが『TVJ』ではそれがテレビジャパンの経理課の女性。
 戦闘技術も戦闘に役立つ専門技術も持ち合わせない女性が、偶然にたよっているところが無くも無いがどのように闘っていくかが読みどころ。

 占拠犯と警察の虚虚実実のやりとりもおもしろい。

TVJ

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