「マジック『首のない女』」
クレイトン・ロースンの『首のない女』(「The Headless Lady」1940年作品、上野景福訳 東京創元社 世界推理小説全集68 1958.9.30発行)は絶版であり古書高価本なので読んだ人はたぶん少ない。
ではミステリ好きは読んでおいたほうがよい本かと言えばそうではなく、「トリックがおもしろければそれでいいんだぁ」の熱烈な不可能犯罪ミステリ・ファンだけが読んでいれば、ミステリ・ファンでマジックをする人だけが読んでいればそれでよい本のような気がする。
何故その『首のない女』をここで取り上げたかというと昔の奇術雑誌で『首のない女』の写真を見かけたのでそれを紹介しようと思ったから。
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『首のない女』を読んだ人でも、これがどんなマジックであるか想像しにくい。
それは、『首のない女』は大部分が視覚効果にうったえるマジックだからだ。
ロースンは、ストーリーの作り手としてはうーんと首をかしげてしまう作家なのだがマジック・シーンの描写やマジック理論を語るときは明快。
そんなロースンでも視覚効果のみにうったえるマジックの描写は不得意だった。
短篇『天外消失』でもそれがうかがえる。
(『天外消失』はマジックとしては成功しているがミステリとしては成功しているとは言いがたいが自論。
このことは何度か書いているのだがいずれ機会を長々と書いてみたい)
実は、ロースン『首のない女』の本国版つまり原書の初版には、ロースンが『首のない女』を演ずる女性といっしょに写っている写真が載っていて、原書初版を持っている人であればその様子を知ることができる。
だが原書初版は翻訳本に輪をかけて入手不可能。
そういったわけで写真を紹介するのである。
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下の写真がマジック『首のない女』だ。
どのようなマジックであるかは写真を見れば一目瞭然。
今あまり演じられることが無いのは、マジックというより「見世物」の性質が強いせいだろうと考えるのだがどうだろうか?